福島の歴史を紐解く~井戸出の清水跡~

「井戸出(いどで)の清水跡」は、福島町2-21先にある湧き水の一つです。残念ながら、今日では夏の一時期の降雨時を除いて、水量が枯れてしまいました。しかし、古くは福島地域の人々に日々の生活用水として利用された大切な湧き水だったのです。青柳段丘にある水源は、現在では多摩川石の石積みによって護られています。水源の上には猿田彦をまつる小さな祠と地元の日露戦争戦没者の顕彰碑(1916年建立)があります。

 

崖の下に降り、先ほど見下ろした方に向けば、そこには小さな祠と多摩川の丸石を積み上げた擁壁がある。祠は猿田彦を祀っているようだ。そして石積みの下から、かつて「井戸出の清水」と呼ばれる泉が湧いている。
かつてはその水量は水車の動力となるほど豊富だったといい、周囲の人々の生活用水として利用され、低地に下ると中沢堀と呼ばれる拝島段丘下の湧水を集めて流れる川の分流へと合流して水田を潤していた。だが湧水はもう何十年も前に涸れてしまい、今では雨の多い年の夏に稀に湧き出す程度だという。下の写真は現在の水量が枯れた様子。

昭島市内には、この井戸出の清水以外に知られた湧水がいくつか残っているが、この場所は今は涸れていることや崖と住宅、森に囲まれた目につきにくい場所にあるため、地元の人以外には全く知られていない状況である。
現在は水は涸れていて、コンクリートで隙間を固められた玉石の下の土は乾ききっていた。もう湧くことは滅多にないのだろうと思わせる、全く水の気配が感じられない風景となっている。市の設置した小さな説明板でも「井戸出の清水「跡」」とすでに失われた湧水であることが示唆されている。

しかし、以前、平成31年10月、台風19号が大量の雨を関東地方にもたらしたのち、涸れていた湧水が復活し石積みの擁壁の下から、水が湧き出していた。